CoCo壱番屋創業者・宗次徳二氏に聞く「顧客第一主義」の経営とは

株式会社壱番屋創業者特別顧問 宗次 徳二 インタビュー

言わずと知れた世界最大のカレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」。創業者の掲げた顧客第一主義、現場主義は現在でも強く根付き、躍進の現動力となっています。そんな伝説の創業者である宗次徳二氏に、ご自身の経営美学を伺いました。飲食業界に限ることなく、このインタビューは経営者にとっては必見です。

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宗次 徳二(むねつぐ とくじ)
株式会社壱番屋創業者特別顧問。1948年生まれ。1974年にカレーハウスCoCo壱番屋の前身となる喫茶店バッカスを開業。1978年にカレーハウスCoCo壱番屋を創業。1982年に株式会社壱番屋を設立、代表取締役社長に就任。1992年に代表取締役会長に就任。2002年より経営から退き、代表権のない創業者特別顧問に就任する(現任)。

お客様を大切にして感謝の思いを伝えていく

ーどういったきっかけからカレーショップで創業することになったのですか?

宗次:私が飲食に携わるきっかけになったのは、うちの奥さんが開いた喫茶店なんです。私は元々は飲食業をやるつもりは全くなく、最初に起業したのも不動産業でした。

ですが喫茶店のオープンを手伝った時に、店にドッと来たお客様を目の当たりにした時に飲食店の魅力にとりつかれてしまい、飲食業界でやっていく決意を固めました。

ー最初はどのような場所で店を開いていたのですか?

宗次:人はいるけれども普通の生活道路でした。今の基準からすると絶対出店しないだろう路地裏的な場所で、いわゆる二流三流立地ですね。もっとも、そうした立地で始めたおかげで鍛えられたから、結果的には良かったんですけどね。

ー最初繁盛する店よりは、最初苦労する店の方がいいということですか?

宗次:どちらかはっきりしていれば私も最初から繁盛の方を取りますけど、「お店がどうなるか」なんて実際にやってみないと分かりません。

でもやっぱりお客様を大切にして、感謝の気持ちを伝えるような経営をしようと思ったら、辛い思いをして鍛えられないといけないと思います。最初からお客様にドッと来ていただいても甘く見てしまうでしょうしね。

経営者はどこまでも現場主義であれ

ー経営の中で最も困難だったことは何ですか?

宗次:何をもって「困難」と言うかにもよりますが、やはり経営している最中の困難は人ですね。いい人材は少ないわけですから、採用活動や求人活動をしてもなかなか来てくれません。

一見いい人でも裏がある人も多いですし、なかなか人間ができていて、仕事もできる人は少ないです。また何とか導いてあげようとしても、全員が期待にこたえてくれるわけではない。

周りからはそうは見えてないと思いますが、人ではずっと苦労しました。新しいお店を出したら、そこには店長以下パートさんを含めて総勢20名以上は必要ですから。

ーー人の問題にはどのようにして対処すべきと思っていますか?

宗次:全ては社長次第だと思います。社長が現場主義を貫いて、自分の言葉で指導をしたり、背中で教えたりすることが大切なんです。「お前に任せたぞ」と人に任せるというのは経営者として甘いとしか思えません。自分は他のことに時間を割きたかったり、楽して儲けようと考えるから人任せにしようとするのでしょうね。

だから、私はとにかく現場主義を貫いて、毎日戻ってきたアンケートに目を通していましたし、店舗を回って「お客様席で注文して何分何秒で料理が出てくるか」とか色々チェックしていました。

また現場にいることで自身の改善点を知ると同時に自身の強みはこれだという確信も持てます。そうすると競合他社が何しようが一向に気にしなくなります。「うちはうちのやり方でいい、明日もこの続きでいいんだ」と信じられるんです。

「継続して栄えるような経営」を行っていく

ーやはり社長の姿勢が大切なんですね

宗次:売上利益も含めて大切なのはやはり社長です。だから本気になってやる、経営者でいる限りはどこまでもひたすらやり続けて、経営が上手くいくことだけを考えないといけません。とにかく私が普段言っている「継続して栄えるような経営」という言葉に尽きます。

ーフードビジネスのやりがいは何ですか?

宗次:やりがいはやはり、目の前のお客様が喜んで「ここのお料理おいしいですね」、「サービスがいいですね」と言ってくれること、そして自分の能力やスキルがだんだん上がっていき、悔しい思いや散々な思いしながらも、半年や1年で自分はここまで成長できたという実感が得られることですね。

お客様から評価されていく中で、経営者だったら数字でもあるわけですが、社員さんだったら能力も上がっていきますし、業務内容や役職も変わっていきます。フードビジネスは経験を積み重ねて自身の成長を実感しながら一段ずつ上がっていくことが出来るんです。

起業とは「創業守成」なり

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ーこれから飲食店を始める方へメッセージをお願いします

宗次:「創業守成」という言葉があります、やるのは簡単だけど成長して発展させることは難しいという意味ですけど、起業するってそういうことなんです。起業だけなら誰にでも出来るけど、やり続けることは難しいですから。

例えばあなたが1000万でラーメン屋をやるとして、目の前に1000万の現金が置かれて、これでこれから先、家族を巻き込んでの苦労をこの1000万で分け合ってください、生活してくださいと言われて、やれると言えますか?

それでも「絶対に自分は頑張り通す」、「どんな困難にも打ち勝つんだ」とそう思えるなら明日にでもやりなさい。それだけ思えるならば、それは人生でのチャンスですし、上手くいったときには人の為にその力を分け与えられるはずです。

とにかくやり続けてください、最初はさんざん苦労してでもいいから、とことん目標を追い続けて、少しずつクリアして右肩上がりに成長していきましょう。ちょっと良くなったからってよそ見なんかしちゃだめです。その時にはまた次の目標を設定するようにして、常に目標を持って目標を追い続けるようにするべきです。

だから今まさにもがき苦しんでいる人は耐えなさい、投げ出したり投げやりになってはだめです。物を付けてお客様を呼ぼうとかそんなことは考えないで、正攻法で頑張り続けて下さい。

ーそうやって信用も積み上げていくんですね?

宗次:そうですね、真面目にやっていれば信用というものは蓄積されていきます。たとえ最初はなかなかお金が借りられなかったとしても、日々の努力を地場の金融機関さんはちゃんと見てくれていますからね。いずれは「あの経営者は一生懸命やって業績も徐々には上げていっている、だから応援しよう」と思ってくれるようになりますから。

実績も信用も最初から備えられているものではなく、ゼロから積み上げていくものです。これらは一朝一夕に伸びるわけではないから蓄積しないといけません。積み上げるのに3から5年はかかるものです。

ー軌道に乗っている仕事ですら大変なのに、全てがゼロからですしね

宗次:仕事を軌道に乗せるといった面でも真面目にやっていくことは大切です。確かに力のある人や社交的な人、人脈が豊富な人、そういう人は事業を軌道に乗せるのは早いのかもしれませんが、大抵はそこで油断してしまいます。

人脈が豊富な人などは「ええい、人生は仕事ばかりじゃない。」と趣味に手を出したりして、気を緩めてしまうんです。だけど、自分は不器用だと思っている人は「自分はそんなよそ見をしていては絶対成功しない。コツコツとやり続けるぞ。」という姿勢で臨みますので、そういう人の方が私はいいと思います。

(取材協力:株式会社壱番屋/宗次 徳二
(編集:創業手帳編集部)

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